こんにちは、宮比ひとしです。
本日は、おすすめ絵本として道尾秀介『緑色のうさぎの話』をご紹介します。
肌の色の違いで悩んだときに読む絵本
自分と他人。
全く同じ人はいませんよね。
考え方、性格や趣味嗜好といった内面的なものから、容姿や身体つきの外面に至るまで、ひとつひとつが違い、個々人を作り上げています。
その違いが魅力として映ることもあれば、ときに仲間外れや差別を生むことがあります。
見た目で判別しやすい部分は、特に標的にされやすいですよね。
ただすれ違っただけの見ず知らずの他人に容姿を嘲笑されたり、逆にした経験はないですか?
嘲笑しなくとも、比較し安堵したことはないですか?
比較し嫉妬したことはないですか?
一度もそう考えたことはない人はいないと思います。
中でも、肌の違いによる差別は歴史に根強く刻み込まれています。
それは遠い国の話ではありません。
日本でも近年、東南アジアからの労働者や留学生が増え、あからさまな差別ではないにせよ感じることがあります。
コミュニティでの連帯感や優越感を得る上で、人が本能的に養ってきたスキルなのかもしれませんが、悲しいことです。
人は意識や自制しないと差別するようにできているのかもしれません。
なぜ肌の色を気にするのか。
なぜ肌の色が差別を生むのか。
肌の色が違うと一緒にいられないのか。
さて、そんな肌の色の違いで悩んだときに読む絵本をおすすめします。
本日のよりみちブックはこちら。
『緑色のうさぎの話』
作…道尾 秀介
絵…半崎 信朗
ジャンル…友情
ボリューム
難易度
『緑色のうさぎの話』あらすじ
ある土地に、たくさんのうさぎがいました。
その中にみんなからバカにされているうさぎがいます。緑色だったからです。
遊ぶときも、ご飯のときも一人。
うさぎは夜が好きでした。
自分の色が分からなくなるから。
月はもっと好きでした。
眺めていると白くなれる気がするから。
みんながボールで遊ぶなか、今日も緑色のうさぎは仲間外れにされていました。
夕方になりみんながうちへ帰る頃、忘れていったボールを見つけます。
「これを渡してあげれば、みんなと仲良くなれる!」
ちょうどボールを探しに来たみんながやってきました。
緑色のうさぎが手渡そうとするや、奪い取られ、聞こえてきた言葉に愕然とします。
「どろぼう…?」
朝になり、思いつめた緑色のうさぎが高い崖から足を踏み出したとき……
『緑色のうさぎの話』作者
作)道尾 秀介(みちお しゅうすけ)
1975年5月19日-
兵庫県芦屋市出身
小説家、歌手
玉川大学農学部卒業後、住宅機器の企業に就職する。
1999年に『どうして犬は』で「小説現代」のショートショートコンテストに入選し、掲載。
2004年、『背の眼』でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し、小説家デビューとなる。
エッセイや音楽活動などジャンルを超えた多彩な作品を手がけている。
また、ペンネームである道尾は都筑道夫に由来する。
代表作…『向日葵の咲かない夏』『カラスの親指』『月と蟹』
絵)半崎 信朗(はんざきとしあき)
1981年-
東京都出身
映像作家
2007年東京藝術大学デザイン科修了。
ミュージックビデオやテレビ番組、コマーシャル等、アニメーションをメインとした映像作品を手がける。
代表作『花の匂い』『常套句』『十力の金剛石』
『緑色のうさぎの話』考察
作者は小説家の道尾秀介さんです。
エッセイ集『プロムナード』によると、『緑色のうさぎの話』は17歳の冬に突然絵本が描きたくなり鉛筆一本で描いたとのこと。
画才のなさに驚いたようですが、物語を作る力ならあるんじゃないかと気づいたそうです。
半崎信朗さんの柔らかいタッチの絵はもちろん素敵ですが、道尾秀介さんによる絵本『緑色のうさぎの話』も一見の価値ありです。
『プロムナード』に特別収録されていますので、ご興味がありましたらご覧ください。
さて、本作は緑色という理由で群れから仲間外れにされたうさぎの物語。
各々に違いがあることは当然ですよね。
その違いが魅力として映ることもあれば、この物語のように仲間外れにされたり差別を受けることがあります。
それは、内面的なものに比べて、外見による違いの方が分かりやすいからかもしれません。
肌の色の違いによる差別は歴史に根強く刻み込まれており、今なおそれに苦しんでいる人がいます。
周りとの連帯感や優越感を感じようとして、本能的に培ってきたものかもしれません。
それはとても悲しいことです。
しかし、もしかしたら意識や自制すること、気持ちを伝え合うことでその差別をなくすことができる、そう思わせてくれる絵本です。
以上、肌の色の違いで悩んだときに読む絵本として道尾秀介『緑色のうさぎの話』をご紹介しました。
本日は最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは、素敵なよりみちライフを。