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『悪の教典』あらすじ

『悪の教典』あらすじ
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こんにちは、宮比ひとしです。

本日は悪の教典』のあらすじについてご紹介します。

 

はじめに

 

ホラー小説って、ゾクゾクして面白いですよね。

可視化できる映画も良いですが、自分の内側から滲み出てくるような小説ならではの恐怖があります。

背筋が凍りつくくらい怖い思いをしたり、手に汗握るスリリングな小説ほど、読み終えた後に爽快な気分になります。

 

道尾秀介『鬼の跫音』の記事でも書きましたが、罰系脳という扁桃体と呼ばれる脳の中枢を核とした恐怖に関係する神経ネットワークがあります。

お化け屋敷で怖い思いをした後に、なんだかスッキリした経験ありますよね。

あれは、恐怖が脳内のセロトニン分泌を促し、爽快感に満たされるからなのです。

 

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さて、今回ご紹介する『悪の教典』はサイコホラー小説。

 

人間の狂気の恐ろしさを扱った作品ですね。

心霊系のホラーは信じない方にとっては、それほど怖くないかもしれません。

けれども、サイコホラーは起こりえるぶん怖いですよね。

 

個人的にサイコホラーって、身近な人物像や舞台だと怖さが増すんじゃないかと思っています。

主人公がパイロットで宇宙空間を舞台にしているよりも、集合住宅で隣人の狂気が垣間見えるストーリーの方が現実味を帯びててずっと恐ろしく感じませんか?

 

小説の舞台は高等学校。

もしも、そこの教師がサイコパスだったとしたら……
あなたがサイコホラー好きの高校生ならば、ぜひ読んでほしいよりみちブックです。

 

『悪の教典』基本情報

『悪の教典』

 

作者…貴志祐介

 

ジャンル…サイコホラー

 

ボリューム 

 

難易度 

 

『悪の教典』登場人物

『悪の教典』登場人物

 

蓮実聖司(はすみせいじ)

端正な容姿と卓越した頭脳から、生徒から信頼されるサイコパス教師

 

片桐 怜花(かたぎり れいか)

直観力に優れ、他者の悪意や本性を見抜くことができる女子生徒。

 

安原 美彌(やすはら みや)

クラスのリーダー的存在であり、蓮実のことを敬愛し、肉体関係にある美しい女子生徒。

 

夏越 雄一郎(なごし ゆういちろう)

おとなしい性格だが判断力に優れた怜花と圭介の友人。

 

早水 圭介(はやみ けいすけ)

蓮実の裏の顔を疑う怜花と雄一郎の友人。

 

『悪の教典』あらすじ

『悪の教典』あらすじ

 

東京都町田市、晨光学院町田高校の英語教師である蓮実聖司。

三十二歳という親近感に加え、端正な顔立ちと英語まじりの軽快なトークで生徒からはハスミンとの愛称で慕われている。

教師としても有能であり、生徒と真摯に向き合う姿から同僚やPTAからも厚い信頼を得ていた。

 

そんな圧倒的な人気を誇る教師の模範のような彼だが、目的を阻む者には躊躇なく手をかける共感性が欠如した殺人鬼であった。

学校という性善説に基づくシステムに、少年時代から周囲の人間を理由なく殺害を繰り返してきたサイコパスが紛れ込む。

 

都合の悪いことは犯罪によって排除していく蓮実。

犯行を重ねる中、片桐怜花と夏越雄一郎、早水圭介の三人の生徒だけは彼に対して疑いの眼差しを向けていた。

だが、いちはやく蓮実の本性を突き止めた圭介は、拷問されたあげく殺害されてしまう。

 

さらに、学園祭の準備で生徒たちが学校に泊まり込んでいた夜、蓮実は肉体関係にあった女子生徒の安原美彌を自殺に見せかけて始末しようとするが、その現場を他の生徒に目撃される。

犯行を隠蔽するため蓮実はライフル銃を手にし、狂気の殺戮を企てた。

 

集まっていたクラス中の生徒を襲う血塗られた恐怖の一夜が幕を開ける……

 

『悪の教典』作者

『悪の経典』作者

 

貴志 祐介(きし ゆうすけ)

1959年1月3日-

大阪府大阪市出身

小説家

 

京都大学経済学部卒。

1996年『ISOLA』で日本ホラー小説大賞長編賞佳作を受賞し、『十三番目の人格‐ISOLA‐』と改題してのデビュー。

1997年『黒い家』で日本ホラー小説大賞。

2005年『硝子のハンマー』で日推理作家協会賞。

2008年『新世界より』で日本SF大賞。

2011年『ダークゾーン』将棋ペンクラブ大賞特別賞。『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞し、同年、宝島社「このミステリーがすごい!2011」国内編第1位、週刊文春「2010年ミステリーベスト10」国内部門第1位に選ばれる。

 

代表作…『黒い家』『硝子のハンマー』『鍵のかかった部屋』

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『悪の教典』蓮実聖司

『悪の教典』蓮実聖司

恐怖のサイコパス教師

 

通っている高校に人気のある先生っていますよね。

蓮実ほどでないかもしれませんが、若くて、明るく、頼りになる教師は生徒のみならず保護者からも人気があります。

そんな信頼していた教師の正体が、共感性の欠如した殺人鬼だったとしたら……

 

考えただけでもゾッとしますね。

サイコパスが学校潜んでいるという設定は、現役の高校生ならハラハラする展開でないしょうか。

表と裏の顔にギャップがあればあるほど恐ろしさが増しますよね。

日常会話やテレビでも、サイコパスという言葉を耳にするのが増えたように感じます。

そんな浸透してきたこの頃ですが、この小説を読むと冗談まじりで人に対して使っていけない言葉だと考えさせられます。

 

モリタートの口笛

 

蓮実は上機嫌になると口笛を吹く癖があります。

陽気な曲調であるモリタートの口笛を吹きながら殺人を犯すという、彼への恐怖を助長する印象的なシーンも見どころです。

まるで、天気のよい休日にドライブでもするかのように犯行を重ねていきます。

 

この口笛の曲であるモリタートとは、戯曲家ベルトルト・ブレヒト(Bertolt Brecht)、作曲家クルト・ワイル(Kurt Weill)、この二人による戯曲『三文オペラ』(Die Dreigroschenoper:1928)での劇中歌「マッキー・メッサーのモリタート」(Die Moritat von Meckie Messer)のことです。

ちなみにモリタートはドイツ語でバラードの意味。

 

この曲は盗賊団のボスであるマッキー・メッサーの犯罪者としての悪行を歌ったもので、以下が歌詞となります。

 

マッキー・メッサー

 

そうさ、サメには歯がある

顔中ほど大きいのやつさ

マッキー・メッサーはナイフを持ってる

でも、あんたにはナイフは見えないのさ

 

ああ、鮫のヒレを見たよ

赤いのは、血が流されたのさ

マッキー・メッサーとしゃれた手袋

いったいどんな悪事があったのかな

 

美しく晴れた日曜日

浜辺で死んだ男がいた

それと街角を回って行く男

そいつがマッキー・メッサーって呼ばれるやつさ

 

シュムル・マイヤーはどこに消えたんだ

金持ちたちはどこに消えたんだ

それに彼のお金はマッキー・メッサーが持っている

なにひとつ証拠はないけどね

 

ジェニータウラーが見つかったって

胸をナイフで刺されて

そして埠頭にはマッキー・メッサーがいた

誰も知らないことさ

 

ソーホーで大火事

7人の子供と1人の老人

マッキー・メッサーがいた

男が質問したって何も分りゃしないのさ

 

それから、未成年者の未亡人

その名前はみんなが知っている

監視されて冒涜されたのさ

マッキー何らでやったのさ?

 

まさに、蓮実その人を歌ったかのような歌詞内容ですね。

 

『悪の教典』考察

『悪の教典』考察

 

凶悪な犯罪者にもかかわらず、蓮実は仮面をかぶり学校に溶け込んでいます。

その凶行を一体どうしたら止められるのか、というのもこの小説の見どころであります。

後半は、サイコパス教師VS生徒の構図でスリリングな展開をみせます。

 

生徒それぞれの性格や思春期ならではの悩みや葛藤も描かれています。

生徒同士で協力し乗り切ろうとする者、蓮実を最後まで信じ続けようとする者、特技を活かして反抗するシーンもあります。

 

さて、『悪の教典』は、上下巻を含めると900ページほどの長編小説となりますが、エンタメ作としての読み応えがあり集中力が途切れることなくスラスラと読める内容です。

 

ただ、一人一人の生徒にスポットを当てており、多くの生徒が一同に登場する前半部が少し読みにくさを感じるかもしれません。

読み進めるのに不安がある方は人物の特徴をメモに記したり、あらかじめ相関関係を調べておくと中盤以降すんなりと楽しめると思います。

 

なお、教師により多くの高校生が手をかけられるという残忍な描写が出てきますので、生理的に受け付けない方はご注意ください。

 

本日は、貴志祐介のおすすめ小説『悪の教典をご紹介しました。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

それでは、素敵なよりみちライフを。