こんにちは、宮比ひとしです。
本日は、我孫子武丸の『殺戮にいたる病』を「結末が衝撃的なミステリ小説」として紹介します。
結末が衝撃的なミステリ小説
さっそくですが、ミステリ小説って面白いですよね。
広義の意味で言えば、ジャンル問わず数々な小説においてミステリ要素が含まれています。
なんといってもトリックが明かされたときの衝撃がミステリ小説の醍醐味。
ミステリ小説って、マジックに似てませんか?
ウサギを入れた帽子をマジシャンがステッキで小突くと、鳩がバサバサーッて羽ばたくようなマジックです。
間近で見ていたはずなのに、いつの間にやら入れ替わってんの。
思わず「ブラボー! ブラブラボー!」つって感嘆の声を上げてしまいそうになります。
そして、ウサギが鳩ではなくダチョウに、鳩ではなくライオンに……
そのトリックが意外であればあるほど、より華やかに、より衝撃的に感じます。
さて、今回ご紹介する作品。
この小説のトリックが明らかになったとき、宮比の心境はこうでした。
ウサギを入れた帽子から鳩が出てくると思って見ていたら、取り出したのはハンマー。
しかもそのハンマーでマジシャンに後頭部を殴りつけられる。
一体全体なにが起きたか理解できず、ただただ呆然としてしまいました。
気になっちゃいました?
さて、そんなあなたに「結末が衝撃的なミステリ小説」をご紹介します。
本日のよりみちブックはこちら。
『殺戮にいたる病』
作者…我孫子 武丸
ジャンル…ミステリ、サイコホラー、エロス
ボリューム
難易度
衝撃の結末度
サイコパス度
エログロ度
『殺戮にいたる病』登場人物
蒲生 稔(がもう みのる)
猟奇的な殺人事件を繰り返すサイコキラー
蒲生 雅子(がもう まさこ)
大学生の息子が殺人犯ではないかと疑う母親
『殺戮にいたる病』あらすじ
※この物語は過激な内容を含みます。
グロテスクな性的表現について抵抗がある方は、納得の上で続きをお読みください。
エピローグ。
永遠の愛をつかみたいと男は願っていた。
東京の繁華街で猟奇的な殺人事件を重なるサイコキラー。
犯人の名前は蒲生稔。
逮捕された稔とこれまで考えられてきた殺人鬼像を、結び付けるのは困難なことだった。
警察でもおとなしく、6件の殺人を自白し、精神鑑定でも責任能力ありとの判断が下される。
死刑判決に対して、彼は控訴しなかった。
前年十月、蒲生稔は初めて殺人を犯した。
大学の食堂で出会った女性とラブホテルへ行き、岡村孝子の歌をハミングしながら、絞殺する。
絶命する彼女を裸にし、「愛してるからだよ」と口にした。
急速に赤みを失い、冷たくなる女の性器に射精する。
これこそが本物のセックスであり、セックスとは殺人の寓話にすぎないと理解する。
稔は今まで存在しないと思っていた真実の愛を信じるようになる。
一方、蒲生雅子は自分の息子の様子がおかしいと思い始めていたところ、部屋のゴミ箱から血のついたビニール袋を発見する……
『殺戮にいたる病』作者
我孫子 武丸(あびこ たけまる)
1962年10月7日-
兵庫県西宮市生まれ
小説家、推理作家
1989年、『8の殺人』でデビューする。
1994年に発売されたスーパーファミコンのサウンドノベル『かまいたちの夜』のシナリオを担当。
シリーズ探偵としては、速水三兄妹、人形シリーズなどがある。
代表作…『8の殺人』『探偵映画』『弥勒の掌』
『殺戮にいたる病』考察
『殺戮に至る病』は、キルケゴール著の『死に至る病』よりタイトルがつけられており、冒頭部分で引用されています。
あらゆるもののうち最もおそるべきこの病と悲惨をさらにおそるべきものたらしめる表現は、それが隠されているということである。
この病がそれにかかっている当人自身でさえ知らないようなふうに人間のうちに隠されていることができる、ということなのである。
(『世界の名著51 キルケゴール』より桝田啓三郎訳)
引用でもある隠された病、つまり精神的な異常性犯罪のおそろしさが克明に描かれています。
あらすじでも抜粋しましたが、かなりヘビーなグロテスク内容ですので読む際は注意してください。
蒲生稔、雅子、元警部の樋口の三名の視点で物語が進んでいきます。
ストーリーのテンポはよく、目を覆いたくなるようなグロテスク表現はあるものの、視点が次々と入れ替わり飽きさせない展開。
我孫子武丸と言えばサウンドノベルゲームの『かまいたちの夜』が有名ですが、このノリで読んでしまうと衝撃を受けること間違いないですね。
当時、『かまいたちの夜』をプレイしたことがきっかけで我孫子武丸を知り、内容知らずに本作『殺戮に至る病』を読んでトラウマになった少年が少なからずいたと思います。
まあ、宮比のことですけどね。
かまいたちの夜
1994年にチュンソフトより発売されたスーパーファミコン用のゲームソフトで、『弟切草』に続く、サウンドノベルシリーズ第2弾。
真冬の雪山が舞台となり、豪雪によって隔離されたペンションで、次々に起こる殺人事件の謎を解く物語。
小説のようにして背景上に文章が表示され、所々に出現する選択肢を選ぶことで様々なストーリーに枝分かれしていきます。
「トラウマものの結末にオラわくわくすっぞ」
「鳩なんか出されるより、ハンマーでマジシャンに後頭部を殴りつけられてーぞ」
そんなあなたに、是非『殺戮に至る病』おすすめです。
本日は、「結末が衝撃的なミステリ小説」として我孫子武丸の『殺戮にいたる病』を紹介しました。
興味が湧きましたら、ぜひ手に取って読んでみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、素敵なよりみちライフを。