こんにちは、宮比ひとしです。
本日は、東野圭吾の『さまよう刃』を性暴力被害を理解したいときに読む小説として紹介します。
性暴力被害を理解したいときに読む小説
![性暴力被害を理解したいときに読む小説](https://miyayori.com/wp-content/uploads/2020/08/男孤独(pixabay)-300x200.jpg)
ニュースをみていると、性暴力による被害がたびたび報道されますね。
警視庁及び総務省の統計によると、年間で人口10万人あたり1.5人が強姦の被害にあっています。
ただ、性暴力にあっても被害を届け出る女性は、およそ2割というデータもあるので、5倍とすると7.5人ほどでしょうか。
1年で人口10万あたり7.5人が被害にあっています。
これを多いととるか少ないととるか人それぞれですが、身近にいてもおかしくない数字ですよね。
中には、それにより命まで奪われるケースもあります。
他人でさえ胸が痛むのに、最愛の子どもが性暴力により失われたとしたらどうでしょう。
さらに加害者が未成年のため、法律では罪を裁くことができなかったとしたら。
性暴力により子の命を奪われた親は何を思い、これからどう生きるのでしょうか。
さて、性暴力被害を理解したいときに読む小説をおすすめします。
本日のよりみちブックはこちら。
『さまよう刃』
作者…東野 圭吾
ジャンル…ヒューマン、家族愛
ボリューム
難易度
復讐度
問題提起度
悲哀度
『さまよう刃』登場人物
![『さまよう刃』登場人物](https://miyayori.com/wp-content/uploads/2020/08/『さまよう刃』登場人物-300x200.jpg)
長峰 重樹(ながみね しげき)
5年前に妻を亡くし、男手一つで娘を育てるサラリーマン
長峰 絵摩(ながみね えま)
高校1年生の長峰重樹の娘
菅野 快児(すがの かいじ)
女性を強姦し、恐喝を繰り返すグループの主犯格の少年
伴崎 敦也(ともざき あつや)
快児とともに女性の強姦を楽しむ少年
中井 誠(なかい まこと)
快児と敦也に強要され、車を貸す少年
『さまよう刃』あらすじ
![『さまよう刃』あらすじ](https://miyayori.com/wp-content/uploads/2020/08/『さまよう刃』あらすじ-300x200.jpg)
この物語は過激な内容を含みます。
性暴力について抵抗がある方は、納得の上で続きをお読みください。
主人公の長峰重樹は、娘が十歳になる頃に妻を亡くし、それ以来男手一つで育ててきた。
そんな娘の絵摩は平凡な少女たちと変わることなく、健全に明るい高校生へと成長する。
その日は花火大会だった。
絵摩は友人と出かけるものの、花火が終わっても彼女は戻ってこない。
長峰は躊躇いつつも携帯に電話をするが通じなかった。
一方、未成年の少年である菅野快児、伴崎敦也、中井誠の三人により車に連れ込まれた彼女は、クロロホルムを嗅がされ気を失っていた。
長峰は絵摩の友達に連絡をとるが電車の中で別れたという。
結局、行方は分からず警察に通報する。
数日後、絵摩の死体が荒川の下流部から発見された。
死亡状況から、警察はクスリの扱いになれていない少年の犯行であること、また犯行時の車の目撃情報から犯行者を特定していく。
その中、長峰の元に絵摩を殺害した犯人が誰であるか匿名で電話がある。
疑りながらも、長峰は怪電話の教えるアパートに向かった。
鍵のありかは電話で聞いており、長峰は少年が留守の間に侵入する。
部屋にあったビデオテープの奇妙なタイトルのラベルに目が止まった。
「8月 花火 浴衣」
なにがあっても目をそらしてはならない、そう思いつつ、ビデオテープを再生する。
映っていたのはクスリを打たれ精気を失っている全裸の絵摩、そんな彼女を楽しげに笑いながら犯す少年。
長峰は未成年である彼らに法律では裁けないことを悟り、自ら復讐することを決意する……
『さまよう刃』作者
![『さまよう刃』作者](https://miyayori.com/wp-content/uploads/2020/08/『さまよう刃』作者-300x200.jpg)
東野 圭吾(ひがしの けいご)
1958年2月4日-
大阪市生まれ
小説家
1981年に現デンソーに入社し、技術者として勤務する傍らで推理小説を書く。
1985年に『放課後』で江戸川乱歩賞を受賞しデビューするも、長年話題作には恵まれず。
1996年の『名探偵の掟』をきっかけに注目を集め、以降はヒット作が続く。その多くが受賞、ドラマや映画化されている。
代表作…『容疑者Xの献身』『秘密』『白夜行』
『さまよう刃』考察
![『さまよう刃』考察](https://miyayori.com/wp-content/uploads/2020/08/『さまよう刃』考察-300x175.jpg)
本作品は、最愛の一人娘を殺された男の復讐劇と、未成年による犯罪及びその裁きについてがテーマとなっています。
正義とはなにか。誰が犯人を裁くのか。
読み進めるごとにのしかかる重く哀しい展開、そして男の苦悩があなたの心を揺さぶるでしょう。
あなたにとって最愛の人が、このようなかたちで無残に殺められたらどうしますか?
相手が未成年だったらどう考えますか?
法律では裁けないからと、自ら復讐しようとする長峰は悪なのか。
それとも肯定してもいいのか。
娘のビデオテープを再生するシーンはとても生々しく、哀しみや怒りといった感情、吐き気をもよおすような嫌悪感がともなうでしょう。
それらを読み進めるにしたがい、しだいに長峰の気持ちと同調するでしょう。
そのとき、本当の意味で被害者の気持ちを理解し、少年犯罪と向き合うことができる物語ではないでしょうか。
本日は、性暴力被害を理解したいときに読む小説として、東野圭吾の『さまよう刃』を紹介しました。
興味が湧きましたら、ぜひ手に取って読んでみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、素敵なよりみちライフを。