こんにちは、宮比ひとしです。
本日は、朝井リョウの『桐島、部活やめるってよ』を「高校生を知りたい時に読む小説」として紹介します。
高校生を知りたい時に読む小説
さて、みなさんは高校時代どんな学生生活を送っていました?
勉強や部活に打ち込んだり……
夢に向かって努力したり……
彼氏、彼女とデートしたり……
友達と集まってわいわいしたり……
なんて、いいことばかりではないですよね。
打ち込めるものがなくボンヤリ過ごしたり……
将来に対して不安を抱えたり……
恋愛がうまくいかず寂しかったり……
喧嘩やからかわれてツライ思いしたり……
いろいろですよね。
高校へ進学しなかった方もいるでしょうしね。
宮比はろくに授業を聞かずに昼寝か空を眺めてたり、放課後は部活に熱中するでもなく、トランプやスリッパ卓球に明け暮れる日々でした。
高校時代って思春期のまっただ中で、多感な年頃ですよね。
人からどう思われてるか気になったり、ちょっとした一言で思い悩んだり。
身体が成熟しパワフルでありながら、精神的には未熟でアンバランスな時期。
あいつは何を考えているんだろう。
あの人は何を思っているのかしら。
自分のことが精一杯でクラスメートや部活のメンバーの気持ちを理解できるほど余裕はなくて。
でも、他人のことを考える能力は確実に備わってきて、自分はコミュニティーの一員であることを実感する年頃。
友人や恋人、クラスメートなどの気持ちを少しでも理解することができれば、今よりも絆が深まったり、過去あった高校時代の悩みを払拭できるかもしれません。
さて、そんな「高校生を知りたい時に読む小説」を紹介します。
本日のよりみちブックはこちら。
『桐島、部活やめるってよ』
作者…朝井 リョウ
ジャンル…青春
ボリューム
難易度
『桐島、部活やめるってよ』登場人物
桐島
部活をやめた男子バレーボール部のキャプテン
小泉 風助
桐島がやめたことで試合に抜擢された男子バレーボール部員
沢島 亜矢
ブラスバンド部の部長
前田 涼也
高校生映画コンクールで特別賞を受賞した映画部員。
宮部 実果
バレーボール部の副キャプテンと付き合っているソフトボール部員。
菊池 宏樹
野球部のユーレイ部員。
『桐島、部活やめるってよ』あらすじ
田舎の県立高校が舞台。
男子バレーボール部のキャプテンである桐島が突然に部活をやめてしまった。
その理由は付き合っている彼女にも、親しい友人にも告げていない。
バレーボール部の補欠だったが、桐島がやめたことで試合に出場することとなった風助。
ブラスバンドの部室からバスケットで時間を潰す男子を眺めていたが、桐島がやめたことで気になっていた彼を見る機会がなくなった亜矢。
高校生映画コンクールで特別賞を受賞するも、バレーボールなど運動部に比べると見劣りしてしまっている映画部の涼也。
バレーボールの副キャプテンと付き合っているが、キャプテンである桐島がやめたことで会う時間が減り、些細なことで喧嘩してしまったソフトボール部の実果。
野球部のユーレイ部員であり、桐島の友人である宏樹。
桐島が部活をやめることをきっかけに、周囲の高校生たちの学校生活に小さな波紋が広がっていく……
『桐島、部活やめるってよ』作者
(新潮社ホームページより)
朝井 リョウ(あさい りょう)
1989年5月31日-
岐阜県垂井町生まれ
小説家
早稲田大学文化構想学部を卒業後、2009年に『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞し、デビューする。
2013年、『何者』で史上初の平成生まれの直木賞受賞作家となる。
代表作…『何者』『もういちど生まれる』
『桐島、部活やめるってよ』考察
この作品の見どころは、17歳の高校生のリアルが瑞々しく、時には生々しく表現されているところです。
ドラマチックに物語が展開するというよりかは、高校生の日常が淡々と進行します。
作者の朝井リョウさんは早稲田大学在学中に本作品で第22回小説すばる新人賞を受賞し、デビューしています。
等身大だからこそ描ける各主人公の心情が、ひしひしと伝わってきます。
運動も勉強も卒なくこなすクラスの中心人物が、もの静かで目立たないクラスメートが映画作りに熱中し打ち込む姿を見て、空虚感とともに眩しく感じるシーンなど胸が痛くなります。
また、朝井さんが岐阜県出身ということもあり、冒頭から「荷物でかいで重いんやて」「俺がこぐのお?」と、岐阜弁がガンガン出てきます。
このあたりも田舎の高校生活の雰囲気を醸し出す要因になっていますね。
チャットモンチーやaikoといった高校生に流行った固有名詞が出てきます。
当時、効果的な役割を果たしており、現在20代後半の方はドストライクではないでしょうか。
各編の主人公はそれぞれ悩みを抱えていますが、それを会話を通して明らかにすることはなく、内に秘めたまま、お互い表面的な交流に留まります。
悩みを打ち明けられないことってありましたよね。
そして、きらめくような情景描写も特徴です。
眩し過ぎて目がチカチカしちゃいます。
例をあげて紹介しますね。
放課後のグラウンドはピアノの楽譜に似ている。
駆け回る生徒達がひとつひとつの音符だ。
野球部の声で低音が安定して、そこにサッカーボールのバウンド音が重なる。
八部音符にスタッカートがついたような軽快なリズム。
強すぎるソプラノは、テニス部の笑い声。
私は窓からサックスを突き出して、まるでグラウンドを操る指揮者みたい。
(『桐島、部活辞めるってよ』より)
ふう。頬が緩んでしまいました。
人間関係は硝子細工に似ている。
見た目はとてもきれいで、美しい。
太陽の光を反射して、いろいろな方向に輝きを飛ばす。
だけれど指でつっついてしまえばすぐに壊れるし、光が当たればそこら中に歪んだ影が生まれる。
(『桐島、部活辞めるってよ』より)
青春時代を象徴するかのような一説ですね。
桐島の退部をきっかけにして、学生たちの揺れ動く心理描写と硝子細工の光と影の変化がとても心に残る作品です。
本日は、「高校生を知りたい時に読む小説」として朝井リョウの『桐島、部活やめるってよ』を紹介しました。
興味が湧きましたら、ぜひ手に取って読んでみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、素敵なよりみちライフを。