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ドストエフスキー『地下室の手記』自意識過剰の引きこもりが読む小説

ドストエフスキー『地下室の手記』自意識過剰の引きこもりが読む読む小説
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こんにちは、宮比ひとしです。

本日は、ドストエフスキー『地下室の手記』を、自意識過剰の引きこもりが読む小説として紹介します。

 

自意識過剰の引きこもりが読む小説

自意識過剰の引きこもりが読む小説

 

自分のこと他人はどう見てるんだろう、どう思われてるんだろう。

そればかりが気になって自意識過剰となり、人とのコミュニケーションがうまくいかないことってありませんか?

 

思春期の頃は大半の人が経験するかと思います。

美容院でイメチェンしたとき、翌日学校でみんながどんな反応するか気になったり。

本当はチャレンジしてみたい服があるけど、似合わないと言われたらどうしようと尻込みしちゃったり。

案外、他人は自分のことなんて気にかけてないものだけど、思春期の頃って気になってしょうがない。

 

「え、美容院行った? ああそう。ふーん、全然気づかなかったわ。そもそも興味ねーし」

「その洋服よくお似合いですよ。スタイルもいいし、かっこいいし、なんていうか……そう、どことなくガンダムに似てらっしゃる」

何て言われようものなら、心に致命的なダメージを負いかねません。

 

歳とともに過剰だった自意識は軽減していき、ちょうどいい具合に落ち着いていくものですが、いつまでも変わらない人だっていますよね。

中には、あまりにも自意識が高いと、社会生活になじめずに長年自宅に引きこもってしまう人もいます。

 

いま現在悩んでいたり、家族や親しい人がそうだったりする人に読んでほしい小説があるんですが、こういったデリケートな問題をはらんだのって勧めるときに少々ためらっちゃいます。

ためらっちゃいますが、あえてそこは果敢に攻めますよ。

こっちは本気に悩んでいるのに呑気に小説なんて読んでる場合じゃねーぜ、って声が聞こえてきそうですが、これくらいの距離感の方が自分を見つめなおすのに効果的かもよ。

啓発本みたいにグイグイくるよりも、小説の方が心に沁みるかもよ。

 

宮比はドラクエⅣの戦闘曲かってくらい生か死かについて悩んだことありますが、小説がきっかけで救われたなーって経験があるわけですよ。

うそーん、小説を読んでそんな変わることある? なんつって疑問に思う人もいるでしょうがね。

小説に求めるものって人それぞれじゃないですか。

ハラハラ、ワクワクするから。

暇つぶしのため。

もっと知識を深めたい。

日常では起こりえないような出来事に心をときめかせたい。

 

数あるなかでも、宮比の根底にあるのは「人間を理解したい」ってことですね。

人の心は奥深く、不可解なものです。

切り開いて見ることも出来ないんで、相手がどう感じるか察するより他はありませんよね。

小説を読むことで、人間の心の機微を知ることができ、それが問題の解決の糸口になるのではないか、と宮比は信じています。

 

話がそれた上にちょっと熱く語り過ぎてしまったので、ぺこぱ風のモーションをつけながら「時を戻そう」

っつーわけで、あんまり自意識が高いと、社会生活になじめずに引きこもっちまうわけですよ。

こもっちゃってマイッチング、参っちゃってコマッチング、困っちゃってコモッチング。

これは悪循環ですね。

 

さて、そんなあなたに自意識過剰の引きこもりが読む小説をご紹介します。

本日のよりみちブックはこちら。

 

『地下室の手記』

 

作者…ドストエフスキー

 

訳者…江川 卓

 

ジャンル…ヒューマン、ロシア文学

 

ボリューム 

 

難易度 

 

引きこもり度 

 

陰キャ度 

 

プライ度 

 

『地下室の手記』登場人物

『地下室の手記』登場人物

 

ネクラーソフ

自宅に引きこもっている40歳の主人公

 

将校

居酒屋でネクラーソフをはねのけた将校

 

ズヴェルコフ

遠方に赴任していく学生時代の友人

 

リーザ

娼婦

 

『地下室の手記』あらすじ

『地下室の手記』あらすじ

 

本作は『地下室』と『ぼた雪にちなんで』の二部構成となっている。

 

第一部は、主人公である40歳の元役人ネクラーソフの独白録。

極端な自意識過剰のため、つい意地悪い態度をとってしまい、一般社会にうまく馴染めなかった。

そして、遺産が転がり込んできたことをきっかけに退職し、それから20年もの間、地下の小世界に閉じこもってしまう。

 

社会から邪魔者扱いされたと恨みながらも、高いプライドゆえに気にしてない素振りを取ったり、人間の理性によって文明が発達していく社会改造の可能性を否定し、人間の本性は調和を乱したり非合理的なものだと思いを連ねる。

独白をつづる中、ぼた雪によって、地下室に一人引きこもってしまった過去である役人として働いていた24歳の頃の思い出がよみがえってきた。

 

自意識過剰のため、うまく関わることができなかった将校や学生時代の友人ズヴェルコフ、娼婦リーザとの苦い経験が第二部で語られる……

 

『地下室の手記』作者

『地下室の手記』作者

 

フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(Фёдор Миха́йлович Достое́вский)

 

1821年11月11日-1881年2月9日

ロシア出身

小説家、思想家

 

レフ・トルストイやイワン・ツルゲーネフと並び、19世期後半のロシア小説を代表する文豪。

社会主義思想の暴力的な革命を批判し、キリスト教に基づく魂の救済を訴えた作品が特徴。

1846年、『貧しき人々』にてデビュー。

ミハイル・ペトラシェフスキー主宰の空想的社会主義サークルの一員であったため、官憲に逮捕される。

死刑判決を受けるも、銃殺刑執行の間際に、皇帝ニコライ1世の特赦により免れる。

シベリアに流刑となり、刑期終了後は、セミパラチンスクの軍隊にて兵役。

1858年、ペテルブルクに帰還する頃には、理想主義者的な社会主義者からキリスト教的人道主義者へと思想を変えていた。

1866年に『罪と罰』を発表したことで、社会的な評価を得る。

一方、賭け事を好む性格のため、借金返済による貧乏な暮らしをしており、出版社と無理な契約をしては、後の妻アンナ・スニートキナに口述したものを速記してもらうほど、締め切りに追われていた。

また、シベリア流刑で悪化した持病のてんかん発作が、作品に大きな影響を与えている。

 

代表作…『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』『白痴』

 

『地下室の手記』考察

『地下室の手記』考察

二部構成のこの作品。

なにゆえ主人公ネクラーソフは引きこもってしまったのか、その理由が明らかとなる物語仕立ての第二部に対して、第一部ではネクラーソフの20年にも及ぶ地下生活での悶々とした気持ちをひたすらとつづっています。

 

約70ページにもなる、この独白部分。

人によっては「読みにくっ」「ダレるわー」といったように感じるかもしれませんが、宮比はこの第一部こそ『地下室の手記』の最大の魅力だと声を大にして伝えたいです。

 

思い悩んで、内に閉じこもることってありますよね。

「どうして馬鹿にされたのに何も言い返さなかったんだろう。次に会ったときは絶対に言い返してやる」

「なんでみんなの前で、嫌な態度とってしまったんだろう。もっと仲良くやれたらいいのに」

「あのとき、こうしていれば」

「あのとき、ああ言ってれば」

引きこもっている人の脳内って、こんな思いが延々と巡り巡っています。

 

第一部では、延々と巡る思いが見事に表現されており、なんだか思い悩む自分を見ているような気分になりますよ。

こんな風によく後悔してるわーって人は、読んでる最中、赤面するやら仲間がいてホッとするやら複雑な気分になること間違いなし。

 

また、『狭き門』ジッドによって「ドストエフスキーの全作品を解く鍵」と評されており、テンプレ的な要素を含んでいます。

 

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ドストエフスキーの作品で、実際に言われてもないのに深読みし、プライドを傷つけられたからと決闘を申し込もうと意気込むシーンが見られます。

こういったプライドが高く自意識過剰の人物がよく出てくるんですが、ネクラーソフはその典型という印象を受けますね。

 

自意識過剰のため、他人からの視線が気になってコミュニケーションがうまくいかないと悩むことがあります。

思春期の頃は誰もが経験することですが、いつまでも一般社会に馴染めず、引きこもってしまった。

そんな現状を悩んでいる方、家族や親しい人がそうである方に読んでほしい小説。

20年もの間、社会から遠ざかり地下室に閉じこもった男の手記を読むことで、人間の心の機微を知ることができ、問題解決の糸口になれば幸いです。

 

最後に手記を通して、こちら側に問いかけてくる箇所もあり、こちらが宮比が心に残った一節です。

「安っぽい幸福と高められた苦悩と、どちらがいいか?」

 

これって生きるテーマでもありますよね。

あなたはどちらがいいと思います?

なんだかこの言葉を聞くと、引きこもって悩んでみるのも意外と悪くないかもって思えてきませんか。

 

 

本日は、自意識過剰の引きこもりが読む小説として、ドストエフスキー『地下室の手記』をご紹介しました。

興味が湧きましたら、ぜひ手に取って読んでみてください。

 

極端な自意識過剰から一般社会との関係を絶ち、地下の小世界に閉じこもった小官吏の独白を通して、理性による社会改造の可能性を否定し、人間の本性は非合理的なものであることを主張する。人間の行動と無為を規定する黒い実存の流れを見つめた本書は、初期の人道主義的作品から後期の大作群への転換点をなし、ジッドによって「ドストエフスキーの全作品を解く鍵」と評された。

 

「興味あるけど、ドストエフスキーの小説って難しそう。最後まで読めるか自信ないなー」って方は、サクッと読めちゃう漫画版がおすすめですよ。

 

19世紀ロシア・ペテルブルクに、ある男が住んでいた。男は過剰ともいえる自意識から「心の地下室」へ閉じこもり、社会と断絶した生活を送っていた。あるとき男は、自身の過去の回想を記すことで、「人間の本質の非合理性」を明かしていくことを試みる。ドストエフスキーが斬新な切り口で、人間心理にメスを入れた長編小説を漫画化!

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは、素敵なよりみちライフを。