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伊坂幸太郎『重力ピエロ』血の繋がらない家族がいる時に読む小説

伊坂幸太郎『重力ピエロ』血の繋がらない家族がいる時に読む小説
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こんにちは、宮比ひとしです。

本日は、伊坂幸太郎『重力ピエロ』「血の繋がらない家族がいる時に読む小説」として紹介します。

 

血の繋がらない家族がいる時に読む小説

血の繋がらない家族がいる時に読む小説

 

この世の中には様々な家族がありますね。

家族構成や性別、年齢など千差万別。

離婚、事故や災害の死別などにより、血の繋がらない両親や兄弟と共に暮らすこともあるでしょう。

 

そうした場合、幼い頃は何も感じなくても、年齢を重ねるにつれて血が繋がってないことを少なからず意識するようになります。

遺伝的な見た目や性格の違いから家族とどう接していいのか困惑したり、周囲の反応で嫌な経験をする時期があると思います。

 

そんなとき、血の繋がった本当の家族なら……と思い悩みますよね。

こういったデリケートな問題は、簡単に周りの人に打ち明けることができないですし。

もし、このブログをお読みのあなたがそんな悩みを抱えているなら、少しでも心が和らぐ小説がありますのでおすすめします。

 

さて、そんな「血の繋がらない家族がいる時に読む小説」を紹介します。

本日のよりみちブックはこちら。

 

『重力ピエロ』

 

作者…伊坂幸太郎

 

ジャンル…家族愛、ミステリ

 

ボリューム 

 

難易度 

 

『重力ピエロ』登場人物

『重力ピエロ』登場人物

 

泉水(いずみ)

遺伝子に関係することを取り扱う企業に勤める会社員

春(はる)

血の繋がらない泉水の弟

癌を患い闘病中の泉と春の父親

数年前に亡くなった泉水と春の母親

 

『重力ピエロ』あらすじ

『重力ピエロ』あらすじ

 

兄の泉水、二つ年下の弟の

泉水はDNA診断や精子バンクといった遺伝子に関するサービスを扱う会社「ジーン・コーポレーション」に勤めており、一方、春は街の落書きを清掃する仕事をしている。

 

舞台となる仙台の街で、あるとき連続放火事件が発生。

放火事件の現場にはグラフィティアート(公共の壁面などでスプレーを用いて描かれた落書き)が描かれてあった。

 

癌を患い入院中である二人のは推理小説好きもあり、放火事件の謎解きに興味を抱くこととなる。

次々と起こる放火事件と火事を予見するグラフィティアート。

 

謎解きを進めるにつれ、泉水と父は事件現場に残されたグラフィティアートと遺伝子の奇妙なリンクに気が付き……

 

『重力ピエロ』作者について

『重力ピエロ』作者について

 

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう

 

1971年5月25日-

千葉県松戸市出身

小説家

 

東北大学法学部卒業後、システムエンジニアとして働きながら執筆活動。

2000年に『オーデュボンの祈り』にて新潮ミステリー倶楽部賞を受賞する。

現在は宮城県仙台市に住んでおり、ここを舞台にした小説が多い。

 

代表作…『アヒルと鴨のコインロッカー』『ゴールデンスランバー』『砂漠』

 

『重力ピエロ』考察

『重力ピエロ』考察

 

『重力ピエロ』の魅力を、「小説慣れしていなくても読みやすい」「レイプ被害によるそれぞれの葛藤」「タイトルに込められた願い」「勇気づけられる父の言動」の4点に分け、考察します。

 

小説慣れしていなくても読みやすい

 

全体として473ページという長編小説ではありますが、一章の間隔が10ページに満たなく、非常に読みやすいです。

 

時間が細切れにしかとれないような忙しい方でも難なく読むことができます。

章の間で場面がコロコロと変わることもなく、登場人物も限られているので「どこまで読んだか忘れた」「この人誰だったっけ」となることはないかと思います。

 

また、ミステリとしてのストーリー展開も面白く、グラフィティアートと遺伝子との関連性についての推理は基礎知識がなくても充分に楽しめます。

 

レイプ被害によるそれぞれの葛藤

 

作中ではすでに亡くなっていますが、母は泉水が幼い頃にレイプ被害にあっております。

春はそのレイプにより身ごもった子どもであり、父や泉水とは血の繋がりはありません。

泉水、春、父、母とそれぞれ言葉には出しませんが心の葛藤を抱えています。

 

成長するにつれ、容姿端麗で芸術家気質のある弟との違いを感じる泉水。

レイプ犯の血が自身に流れていることで悩む春。

血の繋がりはないが自分の子として育てようと決意した父。

レイプ被害に合いながらも懸命に生きた母。

 

それぞれの登場人物ごとに葛藤するエピソードがあり、あなたの立場に、より身近な人物ほど共感し、心を打たれることとなります。

 

タイトルに込められた願い

 

重力ピエロってなんだろうって思いませんでしたか?

作中にこうあります。

 

 

「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ。重いものを背負いながら、タップを踏むように」

「ピエロが空中ブランコから飛ぶ時、みんな重力のことを忘れているんだ」

(『重力ピエロ』より引用)

 

 

ここでいう重力とは、「悲しみ」や「つらい経験」を指しています。

この小説では、レイプ被害によるそれぞれの苦悩があります。

それが、ピエロみたいに楽しく、陽気に生きていたらその瞬間は忘れていられるという意味です。

 

あなたや周りの人がつらく深刻なことを背負っていたとしても、笑顔でいれば、あなた自身や周りの人もつらいことを忘れられるという願いが込められたタイトルですよね。

 

勇気づけられる父の言動

 

『重力ピエロ』では魅力的なキャラクターばかりです。

その中でも父の勇気づけられるエピソードを紹介します。

 

「二人で遊んできたのか?」と訊ねる父

 

昔からたびたび、二人の兄弟に向けて訊ねた言葉。

「そうだよ」と返事すると、嬉しそうに父は顔を崩した。

 

血の繋がらない兄弟が仲良く遊ぶ姿を心から喜んでいるエピソードですね。

 

『自分で考えろ!』と怒鳴る神様

 

母がレイプにより妊娠したとき、産もうと決断したのは父です。

父は妊娠のことを聞かされたとき、とっさに相談します。

神様に。

 

「信仰もないのに」と泉水は呆れますが、そのときの父は必死でした。

そのとき神様から返ってきた声が『自分で考えろ!』です。

父は神様の在り方としては正しいと、即座に春を産むことを決断しました。

 

「お前は俺に似て、嘘が下手だ」

 

癌が進行し衰弱する中で、父が春に対して言ったセリフです。

父が訊ねたことに春はごまかそうとします。

 

「お前は嘘をつく時、目をぱちぱちさせるんだ。子供の時からそうだった。泉水もそうなんだよ」

「お前は俺に似て、嘘が下手だ」

 

遺伝子や血の繋がりで悩む二人の兄弟はこの言葉に救われます。

例え、血が繋がってなくても親子の絆が芽生えると勇気づけられるシーンですね。

 

 

以上、血の繋がりで悩んでいる方にとって、その悩みが少しでも和らげばと願い、血の繋がらない家族がいる時に読む小説」として伊坂幸太郎の『重力ピエロ』を紹介しました。

興味が湧きましたら、ぜひ手に取って読んでみてください。

 

兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは――。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは、素敵なよりみちライフを。

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