こんにちは、宮比ひとしです。
本日は、山田宗樹『黒い春』についてご紹介します。
病気に負けられないときに読む小説
コロナウイルスが猛威を振るう中で、現在闘病中の方や親しい人が感染して苦しんでいる方がいらっしゃるかと思います。
また、いつ感染するのか、休業が相次ぐことによる経済の低迷で今後の生活がままならなくなるのではないか、という不安感を抱え過ごされているのではないでしょうか。
今回ご紹介するのは、致死率100パーセントの未曾有の細菌が全国各地に続出し、人類の命運を賭けた闘いの物語です。
このブログを書くにあたり、現実世界で苦しんでいるのに不謹慎にあたるのではないか、不快に思われる方がいるのではないかと、躊躇していました。
しかし、コロナウイルスによって先行きの見えない状態で世界全体が落ち込む中、その背景にはウイルスを克服しようと懸命に励む人々がいるのも事実です。
きっとその姿は胸を打つものがあり、勇気を与えてくれるのではないかと思います。
そんなあなたに対してエールを送る思いで病気に負けられないときに読む小説をおすすめします。
本日のよりみちブックはこちら。
『黒い春』
作者…山田 宗樹
ジャンル…バイオサスペンス、家族愛
ボリューム
難易度
『黒い春』登場人物
飯守 俊樹(いいもり としき)
監察医務院の監察医
飯守 雪子(いいもり ゆきこ)
不妊治療を受ける俊樹の妻
『黒い春』あらすじ
監察医務院に運び込まれた少女の遺体を監察医である飯守俊樹は解剖することとなった。
当初は覚醒剤中毒死と疑われていたが、解剖の結果、体内から発見されたのは巨大な黒い胞子。
衛生研究所に報告すると、それは未知の真菌であることが判明する。
翌年の五月、口から黒い粉を撒き散らしながら絶命する犠牲者が全国各地で続出し、黒い粉を吐き出す瞬間、手で口元を覆うことから「黒手病」と名付けられた。
腰の重かった厚生省も、多数の死者が出たことでようやく動き出すものの、致死率100パーセント、治療法なし、発症後30分以内に死に至る黒手病に対応策を見出せない。
一人の歴史研究家に辿り着き解決の糸口を掴む中、飯守俊樹の妻である雪子が黒手病に感染し……
『黒い春』作者
山田 宗樹(やまだ むねき)
1965年11月2日-
愛知県犬山市出身
小説家
筑波大学大学院農学研究科修士課程を修了。
製薬会社で農薬の研究開発に従事したのち、『直線の死角』で第18回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、作家デビューする。
代表作『嫌われ松子の一生』『天使の代理人』『百年法』
『黒い春』考察
この作品はバイオサスペンスに分類され、現場の医師が危機を募らせるも、国はすぐに動いてくれなかったり、コロナウイルスで目の当たりにした出来事を予言するかのような展開はとても十年以上前のものとは思えません。
また、医療に留まらず、菌の根源を紐解くにあたり、歴史的なミステリ要素も多分に含まれております。
いま現実に直面するウイルスによる恐怖とリンクし、緊迫感が増すと同時に、必死に解決しようと模索する登場人物の姿に勇気を得られるのではないでしょうか。
そして、黒手病を通して、家族の大切さを丁寧に描いているのが見どころです。
飯守俊樹と妻である雪子は長い間子どもに恵まれず、不妊治療を受けていました。
その後、無事に子どもを授かり幸せの最中、妻が黒手病に感染します。
コロナウイルスに限らず病により、大切な人が亡くなることはあります。
自分の親や子ども、夫、妻、恋人、友人。
病に苦しみ命を落としてしまったら……そう考えると怯えずにいられません。
それでも、世界中に病原菌やウイルスが蔓延しようとも、この世に新たな生命を宿し、産まれる子がいます。
産まれてくる我が子のために、病気に負けられないと立ち向かう親もいます。
生命の誕生と喪失、そんな深いテーマがこの物語では語られています。
以上、病気に負けられないときに読む小説として山田宗樹『黒い春』をご紹介しました。
本日は最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは、素敵なよりみちライフを。